2015年2月28日



 卒業旅行第2段は、大学のサークルの友人たちと山形県は銀山温泉へ行ってきた。昨日と今日。こんなに雪が積もっている景色を初めて見た。新幹線に乗っているとき、雪の照り返しが眩しくて仕方が無かった。強風のため吹雪いていたので遠出はせず、温泉街で饅頭や大福、日本酒なんかを買ったりした。



 夜はこんなふうにガス灯が灯る。舞台装置みたいな写真が撮れた。この赤い橋を渡って若い男女が駆け落ちする光景がありありと思い浮かぶ。



 二日目の今日は風がかなりマシになったので、一日目に予定していた舟下りをしてきた。名にし負う急流の最上川を船頭さんのお話を聴きながら、炬燵に入り芋煮を食べながら下った。
 この二日間、行く先々で花笠音頭が流れていたのでさすがに覚えた。山形県の人は話し方がゆっくりで、皆さんにこにこしていて優しかった。

2015年2月23日

 麦が落ちて実を結んだ日に、わたしは明るい病室を出た。暗い廊下にある背もたれの無いアイボリーのソファに、母が座っていた。静かに編み物をしていた。わたしは隣に座って、考え事をしていた(苦味。音楽は完璧で美しい。その裏側で、男は水垢だらけの便器に向かって唾を吐いていたのだった。唾は、透明の液体の中に透明の泡がいくつも集まってうごめいていた。たった一つの光源によってそれらは、白く縁どられていた。わたしたちと同じ色、同じ成分の唾だった。唇からダラダラ垂れてなかなか離れない三滴目を、鋭く息を吐いて引き離した。唇の上で光る唾液をぬぐった。天井から下がっているレバーを引いた。唾液の浮かんだ水が流れていった。この夢がいちばん良かった。鳥のように自由だった。男は。男は一度も栄光を手にしたことの無い貴族だった。いつもサイズの合わない服を着ていて惨めだった。いつもサイズの合わない服を着ていて惨めだったのだろうか。ガラスは青く反射していて、もうなにも教えてくれなかった)。

2015年2月10日

 田島ハルコさんの隠れファンなのだけど、サウンドクラウドにフォイヤー・デス・アルツの「シュミリゲス・ブロート」のカバーを上げているのに昨日気付き聴いた。可愛い。彼女のユーモアがノイエ・ドイチェ・ヴェレに寄っていったのは幸福な出会いだな。








 あとダンボールレコードのコンピレーションで聴いて以来すごい~と思っていたにゃにゃんがプーさんのライブ映像が上がっていたので観た。すごい~よく出来てる~。ポーズにきどりっこぽさがあるという評を見て納得。「ニュー餅太郎」のほうがそういう感はあるけど、「ちっともよくならない」が非常に好きだ(コンピにも入っている)。悲しい歌だ。




2015年2月5日



 1月29日。早起きしてレポートを終わらせようと思っていたのに、結局起きたのは13時半過ぎだった。ゆっくりスープを飲んで、ゆっくり出掛ける準備をして、16時20分頃に渋谷に到着した。文化村へ行くつもりが極度の方向音痴なので道に迷い、泣きそうになりながらセンター街辺りを疾走、なんとか35分の「毛皮のヴィーナス」に間に合った。映画館を出て、煙草屋で煙草を買い、フレッシュネスバーガーでポテトとチャイティーを頼んだ。19時半頃に店を後にし、遠回りしてO-WESTの下にあるローソン(昔はampmだったな、いつ変わったのだろう)に行きチケットを引換え、向かいにあるO-EASTに入った。バーカウンターは混んでいたので、手近にあったあまり好きじゃないハイネケンを手に取って壁に寄りかかった。客層はほとんどカップルだった。それは男女だったり同性同士だったりした。白人が多かった。
 TychoはDIVEのジャケット写真に惹かれて買った。2011年だから大学一年生の頃か。当時ミクシーのアイコンをこのジャケットにしていたような気がする。彼らの存在を知ったのも、今回の来日を知ったのも、インターネットからだった。
 ライブはずっと階段やらバーの椅子やらに座って聴いていたのだけど、そろそろいいかなと思って人混みに突入した瞬間にA Walkが流れてきて、みんなが一斉に、はあ、と溜息をついた。周りで抱き合っているカップルたちは、家の机の上にあるマッキントッシュを起動させ、アイチューンズからTの項目を探し、Tychoを流しながら、キスやセックスをしているのだろう。わたしはいつも寝るときに聴いていたから、ありきたりだけど、小さい頃から繰り返し見ていた不思議な夢に出て来る人たちが、大人になったある日、突然目の前に現れたみたいな気分だった。こういう感想を抱くことからも分かるけど、Tychoみたいな音楽は空間が重要で、それらは個人的な風景だから、ライブをやるのは難しいだろうなと思った。スコット・ハンセンが何度もビューティフル・ナイトだと言っていた。美しい晩だった。

2015年2月3日

 コートの左ポケットには四枚、飴の包み紙が入っていた。指の触れたところからビニールの擦れる乾いた音がした。彼女はわたしの話なんて一つも聞いていなかった。テーブルの下でスカートの裾をたくし上げ、綺麗に磨かれた爪を白い太腿に突き立て、赤い血を流している。それくらいは分かっていた。わたしは話すのをよした。一度だけ彼女に向かって微笑み、かばんの中から咳止めの錠剤を出し、水を使わずに飲み込んだ。副作用の眠気はじきにやって来た。眠りに落ちる直前、あるいは眠りに落ちた直後、破れた薄膜の向こう側からコーヒーの香りがした。後悔は夜に訪れるのだ。一つ目の飴が口の中で溶けたとき、彼女は百年前の雪原で、すべての血を失っていた。
1月観た映画
・嵐を呼ぶ男
・フィフス・エレメント
・ニューヨークの巴里夫
・トゥルー・ロマンス
・座頭市物語
・夜叉
・百円の恋
・1941
・TAKESHIS'
・パルプフィクション
・Dolls
・ソナチネ
・監督、ばんざい!
・その男、凶暴につき
・鳥
・テッド
・クレージー作戦 くたばれ!無責任
・サイコ
・毛皮のヴィーナス
・HANA-BI
・さらば、愛の言葉よ