2015年7月22日














   



 会社自体に休みが無いので夏休みは交代で取る。そろそろ長期休暇が無いと心だけじゃなくて肉体的に死ぬ、つまり死ぬ。と思ったので先週末から休みを取った。なんとなく、タイに行こうと思ってタイに行くことにした。一人旅は初めてだった。一人で旅行すると告げるとみんなから過剰に心配された。理由はわたしがかなり駄目な人間だからです。
 滞在期間は2泊4日。あっという間だった。宿泊したのはラムカムヘン駅前のホテルで、Wi-Fiが有料、アメニティがタオルと石鹸と綿棒くらいしか無い、という点を除けば、バスタブもありお湯も出るし、全体的な経年劣化は見られるが最低限の清潔感は心掛けていますよという気持ちは伝わり、良くはないけど悪くもないホテルだった。駅の下にスターバックスがあったのでWi-Fi使ってこましたるわいと思って入店したけど、Wi-Fi通ってなかった。でも、改札を出て右手にあるCHAO DOIというカフェにはWi-Fiが通っていました。ここもそうなんだけど、バンコクのWi-Fi使えるお店は、商品を買うと店員がパスワードの書かれた紙をくれたり、口頭で伝えてくれたりといったスタイルで、秘密の暗号っぽくてわくわくした(面倒臭いけど)。

 観光という観光はほとんどしていない。ほとんどというかまったくしていない。ラムカムヘンは寺院のある区域からかなり離れていたからである。二日目、ラムカムヘンからバスに乗ってカオサン通り(犬の写真の下)へ行ってから大仏かなんか見学しましょうかしらね。と思ったけど、まずバス停の標識に書いてある停車するバスの番号と、ベンチの後ろに立っている壁に書かれているバスの番号とが異なっているし(タイのバスは1~200くらいまであった気がする)、そのどちらにも書いていないバスも平気で停まる。やっと乗ったと思っても、車掌さんは停車駅を一切言ってくれなくて、唯一持っていたガイドブックを開くと「勘を頼るか、地図を見て降りるしか無い」と書いてあり、ふざけるな、人を馬鹿にするのも大概にしろ。とメロスは激怒した。
 1時間くらいバスに揺られて、もうここどこなんだろうとボーっとしていたら、見かねた車掌さんの男の子がタイ語で「どこに行きたいの?」というようなことを恐らく訊いてきて、「カオサン」と答え地図を見せたら難しそうな顔をなさるから、早々に諦めて、コップクンカー、バイバイ、と手を振り下車した。車掌さんもバイバイ、と手を振ってくれた(あとで地図を改めて見たら、方面としては間違っていなかったようだった)。結局タクシーに乗った。ぼったくりタクシーじゃないかメーターをぐんぐん見つめた。ぼったくりタクシーじゃなかった。でもタイのタクシーはあんまり安くない気がする。台湾なんかイケイケですからね、その点。
 カオサン通りはバックパッカーの聖地だとかで、ウィード感が無くもなかった。ウィード柄のティーシャツが売られていたし。喉が渇いたため開けた造りのレストランとバーの中間みたいなお店に入り、ジントニックを飲んだ。そのあともバーを転々としてタイビールをはじめとした酒を飲み続け、身も心も大仏からは遠ざかっていったのであった。南無。

 というような具合に、基本的に歩いては酒を飲み、屋台でご飯を食べ、酒を飲み、読書し、酒を飲んでいた。ビールなら酔わないので鱈腹飲んで食べた。写真にも撮ったが、バーセルミの『哀しみ』というかなり都会的な小説を読んでいた。音楽はオウテカをよく聴いた。徒歩以外の移動手段は、最初は電車に乗っていたが途中からバイクの後ろに乗せてもらう愉しみに目覚め(単純にタクシーのバイク版で、バンコク市内のナウなヤングたちはみなこれで移動していた。制服姿の女の子らは、月に腰掛けるみたいな塩梅でバイクに乗っていた。わたしはやはり怖いので、しっかり跨って運転手の肩に手を置いていたが…)、専らバイクを利用していた。
 そういえば一日目に乗り換えでサイアムという駅で下車した。東京でいう原宿・渋谷ポジションらしいので東京下町のファッションリーダーとして要観察地域だなと思いすこし散歩することにした。駅前にサイアムシティ?とかなんとかいうお洒落ビルが2、3あり、通り沿いに服屋が並んでいる。が、本当にその一区画だけで、あとはいつも通りのタイだった。ちょっと油断すると廃墟があるし。ツイッターにも書いたけど、発展途上国なのでは無くて、国のお偉いさんから仕事として命じられるからビルを建てたり駅を整備したりしているだけで、便利であることとか自国が国際社会の規範に沿って発展していくこととかに対しさほど関心が無い、という印象を受けた。サイアムも、若者たちがニューヨークやらトーキョーみたいなの欲しがってるから、とりあえずこのサイアムシティ建てておくか、もうそれでいいじゃん?ねえ、いいよね、疲れたし寝させてね。という感をひしひしと感じました。サイアムシティ、4階くらいしか無いし。お店もあんまり入ってない。イッセイミヤケのバオバオが入っていた。あとディーゼルとかスーパードライ(アサヒでは無い)。プレイ・コムデギャルソンを着ている人が結構居た。あと、白いティーシャツに黒のプリーツスカートが流行っている模様。制服か?ってくらいみんな着てた。制服か?閑話休題。警察か警備員かそんな立ち位置の人が街にちらほら居るんだけど、みんな街路樹にハンモック張ったりベンチに寝転んだりして勤務中からグースカピーですよ。発展より睡眠ですよ。正しい。先述したバスの車掌をしている男の子も爆睡していて、お客さんが乗ってきても気づかず、運転手に棒でつつかれようやくお金を徴収していました。そしてそのあとまた寝ていました。

 気づいたらすごく書いていた。わたしは目に入ったものにすぐツッコミを入れたり感想を述べたりしないと気が済まない気持ち悪い人間なんだけど、一人だったから会話でその時々の感想を消化出来ずこんなことになった。もっと書けるけどもういいや。タイはいい国でした。

 もういいやと思ったけど最後に一つ。現実逃避しに来たわけじゃないけど、わたしはタイに居ながらも日本で生きているんだなと思い知らされた。なにも知らない土地や人を含め、この世界で生きていくしかないのだと。嫌なことだと思った。うんざりした。でも本を読んだりカメラのシャッターを切ったりしているときは、そういったすべてから隔絶された限りない自由を感じた。夢を見ている間だけ無垢で居られるのだ。

2015年7月6日

 叶美香さんが好きだ。叶美香さんとか松井冬子とかああいった、でっかい美人が好きだ。美人がでっかいとその分美が世界を占める割合が大きくなるから嬉しいのだ。この二人にはいずれ「崖の上のポニョ」のグランマンマーレくらい大きくなって欲しい。グランマンマーレは救いだ。あんなでっかく優しく美しい人が海に居たら最高なのだ。世界のすべてをでっかい美人が抱きしめていて欲しい。ジブリってあんまり興味無いんですけど「崖の上のポニョ」という映画はとても素晴らしいですね。ジブリでいちばん好きです。わたしがかえる海にグランマンマーレが居たらいいと思います。叶美香さんの大きくて白くて柔らかくてあたたかい身体に抱かれて眠りてえ。うどん屋で光りてえ。猫を飼いたいと思っても家に帰って猫がにゃーんとしていたらそれはそれで不気味だと思うが、家に帰って部屋のドアを開けたら布団のうえに(わたしはベッドが嫌いで布団を敷きます)裸に薄いヴェールを纏った叶美香さんが横たわり「まあ、おかえりなさい」と言って微笑んでくれたら、もうそれだけで自分の人生は正しかったんだなと涙するだろう。このくだらない部屋を青い海で満たしてでっかい神様に抱かれて眠るんだ。
 意外と大きい子犬と、まるくて舌触りの悪い豆腐。
 才能が無いからどの台風もだめだった。喜びの数え方だけが天文学的だった。女は確かむかしサーカス団に入っていたかなんだかで、その舞台化粧の名残か、唇だけばかに赤かった。暗い夜道でもその唇は闇をはじいて赤かった。赤い唇はいつもわたしの聞きたくない言葉を知っているらしかった。聞きたくない言葉が煙になって電信柱に絡みついた。それを見た。浮浪者もそれを見ていた。足元の橋が崩れ落ち、きれいに額装されたすみれの花の絵が川を流れていった。それを見た。浮浪者もそれを見ていた。なにも続かなかった。いつも手紙をくれるときは、深い紫色の便箋を使う女だった。うまれてからただの一度だって、人を殺しちゃいなかったのに。

2015年7月4日

5月観た映画
・博奕打ち
・博奕打ち 一匹竜
・博奕打ち 不死身の勝負
・博奕打ち 総長賭博
・博奕打ち 殴り込み
・博奕打ち 外伝
・日本女侠客伝 侠客芸者
・幕末太陽傳
・暖簾

6月観た映画
・ラヴ・ストリームス
・ジェームズ・ブラウン 最高の魂を持つ男
・マルチェロ・マストロヤンニの甘い追憶
・モーターサイクル・ダイヤリーズ
・女は二度生まれる
・しとやかな獣
・卍